睡眠障害

睡眠障害とは

 ある調査によれば、日本人の5人に1人が不眠に悩まされているといいます(白川修一郎ほか:睡眠障害の診断・治療および疫学に関する研究;厚生省精神・神経疾患研究委託研究報告.平成7年度)。不眠状態を放置すると、疲れやすい、あくびが止まらず居眠りしてしまう、仕事に集中できない、自動車運転や機械の操作に危険が生じるなど、日中の活動に大きな支障がでる危険性があります。不眠には、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒など大きく分けて3つのパターンがあります。また、時間的には眠れているが、その時間帯が社会生活上大きくずれてしまっている(睡眠・覚醒スケジュール障害)のも睡眠障害の一種です。さらに、不眠が他の精神疾患(統合失調症、うつ病、適応障害など)の症状の一部である可能性もしばしばあるため、不眠を自覚した際は、早めに専門医にかかることをお勧めします。

 一方、夜しっかり寝ているはずなのに、日中眠くて眠くてしょうがない場合は、過眠症を疑います。過眠が疲労蓄積のために一時的に生じているのであれば、正常な生理現象の範囲ですが、あまりにも長く続くようであれば、ナルコレプシーや睡眠時無呼吸症のような病気が背景にあるかもしれないので、専門的な検査を受けることを勧めます。

睡眠障害の治療法

 睡眠障害の背景に別の精神疾患の存在が疑われるときは、そちらの治療をまず優先することになります。不眠だけが当面の問題であれば、通常は精神療法(睡眠衛生教育)から始めることになります。これは、人間の脳内に備わっている体内時計(時計遺伝子)を正常に働かせることを目標にします。たとえば、「刺激(カフェイン、喫煙、アルコール、強い照明、大きな音)を避け、眠る前には自分なりのリラックス法を作る」「同じ時刻に毎日起床。早寝早起きではなく、早起きが早寝につながる。」「日曜日に遅くまで床で過ごすと、月曜日の朝が辛くなる。」「目が覚めたら日光や強い照明を浴びて、体内時計をスイッチオンする。逆に、寝る前は暗めの照明に。」「昼寝をするなら、15時前まで30分以内に(体内時計を狂わさないために)」などです(「睡眠障害の対応と治療ガイドライン」内山真)。それでも睡眠障害が改善せず、日中の支障が大きく生じる場合は、専門医による薬物療法も選択肢となるでしょう。